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useful急速な円安で追加緩和観測が後退、日銀は現状維持を決定へ

更新日:2014.10.04|お役立ち情報 お知らせ 新着情報 経済

10月3日(ブルームバーグ):景気が暫定的に後退局面入りとなる可能性が高まるなど、経済・物価情勢はもたつき気味に推移しているものの、急速な円安の進行を受けて、日本銀行の追加緩和観測が後退していることがブルームバーグ・ニュースの調査で分かった。 エコノミスト33人を対象に9月26日から10月1日にかけて行った調査で、6、7日の金融政策決定会合は全員が現状維持を予想した。追加緩和の予想時期は、「年内」が8人(24%)と前回の32%から減少。「年明け以降」は14人(42%)と前回から横ばい。一方で、「追加緩和なし」は11人(33%)と前回(26%)から増加した。

 

消費増税の影響が長期化していることに加え、輸出や生産の低迷、さらには天候不順もあり、景気は暫定的に後退局面に入ったとの見方が強まっている。しかし、日米の金利差拡大観測を背景に急速に円安が進行していることを受け、当面は日銀に対する追加緩和圧力は低下するとの見方が強い。 野村証券の松沢中チーフストラテジストは「もともと追加緩和はないと見ているが、昨今思った以上に早く、国内で円安警戒論が強まっていることは、追加緩和なしの見方を増やす要因になるだろう」という。

 

黒田東彦総裁は8月8日の会見で、2014年度の成長率は「0.5%前後、あるいはそれ以下と言われている現在の潜在成長率を下回る可能性はあまりないと思う」と述べた。また、7月15日の会見では、消費者物価(生鮮食品除くコアCPI、消費増税の影響除く)の前年比上昇率は夏場にかけて「1%台を割るような可能性はない」と言明した。

 

黒田総裁の見通しに黄信号

 

しかし、ソシエテジェネラル証券の会田卓司チーフエコノミストは「10月31日に公表される展望リポートで、日銀は14年度の実質成長率を1.0%から0.5%程度へ大幅に引き下げることになるだろう」とみる。 8月のコアCPIは消費増税の影響を除くベースで前年比1.1%上昇と前月(1.3%上昇)を下回った。大和総研の熊谷亮丸チーフエコノミストは「9月以降、コアCPI上昇率は一時的に1%を割る恐れがある」と言う。

8月の鉱工業生産が2カ月ぶりにマイナスとなったことで、7日に公表される同月の景気動向指数で、CI一致指数の基調判断が「足踏み」から「局面変化」に下方修正され、暫定的に景気が後退局面に入ったという認定が行われる可能性が高まっている。

大和証券の野口麻衣子シニアエコノミストは「景気は、後退局面に入ったと暫定的に認定される可能性が高まっている。輸出が依然横ばい圏で推移し、国内消費の回復ももたつくなか、生産を抑制しているのにもかかわらず、在庫が大きく増加している」と指摘する。 短観は追加緩和の可能性を遠のかせた 一方で、8月の失業率が3.5%に低下するなど、雇用・所得関連の指標は堅調を続けている。

9月企業短期経済観測調査(短観、9月調査)は、為替の円安や堅調な収益に支えられ、大企業・製造業の景況感が2期ぶりに改善。14年度の大企業・全産業の設備投資計画も上方修正された。

 

第一生命経済研究所の熊野英生首席エコノミストは「短観は追加緩和の可能性を遠のかせた」と指摘。SMBCフレンド証券の岩下真理チーフマーケットエコノミストも「前向きな循環メカニズムは働いており、辛うじて日銀のシナリオに沿った動きだ。

黒田総裁の言う『必要とあらば』に該当する状況にはなっておらず、追加緩和を検討することはないだろう」とみる。 さらに、ここにきて追加緩和期待を押さえ込んでいるのは急速に進んだ円安だ。

 

SMBC日興証券の森田長太郎チーフ金利ストラテジストは「政治的には、円安への批判も出てくる中、物価は1%程度の安定状況が実現する中では追加緩和に踏み込みにくい状況となっている」としている。

※ブルームバーグより抜粋 02