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useful豆知識No.33

更新日:2017.01.25|お役立ち情報 新着情報 金融・マーケット

高齢者を銀行がターゲット?「外貨建て保険」窓販ルートで苦情が増加!高利回りのリスクが理解できない

国内の低金利状態を背景に、高利回りの「外貨建て保険商品」が個人向けの売れ筋商品となっています。その一方で、「こんなはずではなかった」「そんな話は事前に聞いていなかった」という苦情の類が増えています。l_141とくに、商品を購入した高齢者の親族からのクレームが広がっているといいます。金融ジャーナリスト、浪川攻さんの報告です。

  ◇高齢者への販売は厳しいルールが

 外貨建て保険というのは変額保険の一種で貯蓄型商品だ。生命保険ではあるが、返戻金が相場次第で増減する。 高齢者に複雑な金融商品を販売する際には、厳しいルールが適用されるようになっている。例えば日本証券業協会には、複雑な仕組みの投資信託などを高齢者に販売する場合の厳格な自主ルールがある。客が80歳以上なら、原則として上司の事前承認を受けたうえで勧誘し、受注は翌日以降、上司が行う、などだ。保険商品についても、金融庁が保険会社向けの監督指針に販売上の留意点を盛り込んでいる。ただ、近年、投資信託にきわめて似た、複雑な保険商品が出てきた。従来に増して詳細な商品説明をしないと、顧客に理解されず、誤解を招きかねない。保険商品に関する苦情・相談の増加は、こうした情勢を如実に反映したものと言っていい。

  ◇支店窓口での保険商品販売で苦情が急増

  なかでも、銀行が支店の窓口で保険商品を販売する「窓販(まどはん)」と呼ばれるルートで苦情件数が増加している。金融庁の利用者相談室に寄せられた苦情・相談件数は2016年4月から10月までの7カ月間で、前年1年間の件数の2倍を超える107件に達している。例えば、高齢者が外貨建て保険を購入したことを知った親族からの相談だ。「株取引の経験もないのに、為替リスクのある『外貨建て保険』を販売された。高齢者が商品の内容を十分に理解していたとは思えない」というような内容である。こうした商品を解約する際には独特のルールがあるが、それを理解していなかったという相談もある。いうまでもなく、外貨建て保険の場合、そのときの為替相場の水準によって返戻金が大きく変動するリスクを伴っている。そのうえ、保険商品独特の複雑な仕組みがあるのだから、「金融知識が乏しい高齢者には理解するのは容易ではない」と銀行関係者も指摘している。販売の際に商品説明を「理解できた」と顧客が言っても、実際にはあいまいな状態であるというケースは決して少なくないようだ。

 ◇販売目標の設定が銀行員を追い立てる

 わが国の場合、まとまった資産運用のおカネを保有しているのは高齢者であり、金融機関としては高齢者が重要なセールス先になっている。しかも、販売する側は、販売額や販売件数などを目標化していることが多い。「商品説明に費やす時間的な余裕は限られている」(地銀関係者)ため、ある意味では、顧客に理解してもらえたという見切りが必要になっているのが実情だと言う。まったくもって、不幸な話である。「『高齢者に販売する際には親族の同席を求めよ』と社内でも言われるが、若い世代は仕事などで日中には不在であり、結局、高齢者一人に説明するしかない」。ある銀行員は、こうぼやく。だが、その結果が親族などから持ち込まれる苦情だとすれば、すべての責任は販売した銀行員にあるというほかはない。

 「最近の行員は困ったものだ」と銀行経営者は渋面を作るが、その経営者が立てた目標が、現場の銀行員を追い立てているのである。今後、この手の商品販売に目標設定することが妥当なのかどうかという点も問われかねないだろう。金融における今年のテーマのひとつである。

※経済新聞より抜粋